いくつか前の記事から、GeoGebraのオブジェクトについて説明しています。なお、この記事はGeoGebra公式サイト(オブジェクト関連ページ)をもとに作成されています。
GeoGebraのオブジェクトには一般的なものと幾何学的なものの2種類があります。前回までの記事で一般的なオブジェクトについては説明済みですので、今回の記事からは幾何学的なオブジェクトについて説明していきます。
幾何学的なオブジェクト
幾何学的なオブジェクトの種類
GeoGebraの幾何学的なオブジェクトには、大きく分けて以下の7種類があります。
- 点とベクトル
- 線と座標軸
- 円、楕円、双曲線、放物線
- 関数
- 曲線
- 不等式
なお、点、軌跡、および上記のオブジェクトの一部により構成されたリストのことを「パス」と呼びます。
この記事では、点とベクトルについて説明します。
点とベクトル
GeoGebraでは、点とベクトルの入力方法はとても似ています。ただし、注意しなければいけないこともありますので、しっかり理解しましょう。
ツールによる入力法
まずはツールを用いて、点やベクトルを入力してみましょう。点やベクトルの入力は簡単です。下記のツールをタッチして、画面上の所望の位置をタッチ(クリック)するだけです。
点やベクトルの入力例を以下に示します。入力した点やベクトルには自動でオブジェクト名が割り振られます(※自分でオブジェクト名を指定することもできます)。入力した点やベクトルはタッチ操作(PCの場合はマウス操作)で自由に移動させることができます。
オブジェクト上に点を配置することもできます。オブジェクト上に配置された点は移動可能範囲が制約されます。以下の図は「オブジェクト上の点」というツールの使用例です。下記の例では、点Dを三角形ABC上に配置しています。点Dは三角形ABCの内部しか移動できません。また、点Eはy軸上に配置されており、点Eはy軸上のみを移動できます。
数式による点の入力法
数式やコマンドを使って、点やベクトルを描画することもできます。まずは点の入力方法を説明します。点を配置するには(x座標,y座標)もしくは(絶対値;角度)と入力すれば良いです。前者はデカルト座標による指定、後者は極座標による指定です。描画例を以下に示しますので、確認してみてください。
3次元グラフ上に点を入力することもできます。空間図形アプリを開いて、(x座標,y座標,z座標)あるいは(絶対値;偏角;仰角)と入力してみてください。
Pointコマンドを使って点を入力する方法もありますが、上記のようなカッコを使う方法が基本となります。より高度なことを実行したい場合は各種コマンドの知識が必要となるので、幾何コマンドについて勉強してください。
1点、注意事項ですが、点に対してオブジェクト名を命名する場合、必ずアルファベットの大文字から始まる名称をつける必要があります。 小文字から始まる名称を設定すると、GeoGebraはそれをベクトルであると解釈します。このことについてはベクトルの説明のところで詳しく説明します。※気になる人は上記の図で、各点のオブジェクト名が全て大文字のアルファベットになっていたことを確認してください。
数式によるベクトルの入力法
数式的にベクトルを入力する方法には2種類あります。一つはVectorコマンドを使うこと、もう一つは点の時と同じようにカッコを用いる方法です。
Vectorコマンドを使う場合、Vector(点)もしくはVector(開始点,終了点) と入力します。これらの点はデカルト座標で指定しても良いですし、極座標で指定しても良いです。Vectorコマンドを使うと、ベクトルの始点を自由に決められるのがメリットです。
原点を始点とするベクトルを入力する場合、カッコを用いた簡易記法が使えます。オブジェクト名を指定する形で、u=(x座標,y座標)あるいはu=(絶対値;角度)と入力してみてください。3次元ベクトルの場合は、u=(x座標,y座標,z座標)あるいはu=(絶対値;偏角;仰角)です。なお、オブジェクト名にはほかの文字を使ってもよいですが、必ずアルファベットの小文字から始まる名称にしてください。以下に、簡易記法でのベクトルの入力例を示しますので、点とベクトルのオブジェクト名の違いを確認してください。
点やベクトルの移動と制約
点やベクトルの成分の取得
点やベクトルのxyz座標の成分を取得したい場合は、組み込み演算子x( ), y( ), z( )コマンドを使用します。極座標の成分の絶対値を取得したい場合はabs( )コマンドあるいは| |、偏角を取得した場合はarg( )コマンド、仰角を取得したい場合はalt( )コマンドを取得します。以下に、これらのコマンドの実行例を示しますので、確認してみてください。
点やベクトルを用いた演算
GeoGebraでは、点やベクトルを用いて様々な演算を実行できます。以下の図は点やベクトルを用いた演算の例です。
上の図では2つの演算を実行しています。一つは点A、Bの中点Mを求める演算、もう一つはベクトルuを回転させる演算です。GeoGebraは無料ソフトウェアですが、様々な数学演算が可能なソフトウェアです。いろいろ試してみると数学への理解が大きく深まると思いますので、ぜひ触ってみてください。
まとめ
今回の記事ではGeoGebraの幾何学的オブジェクトの中から、点とベクトルについて説明しました。
この記事で解説した点オブジェクトとGeoGebraの各種ツール、コマンドを組み合わせると、さまざまな多角形や平面、曲線などを描画することができます。幾何学的な計算はGeoGebraの得意分野です。GeoGebraを使うことで数学への理解度を素早く向上させることができますから、ぜひ使ってみてくださいね。
次回も幾何オブジェクトについて解説していきますので、ご興味のある方は是非そちらもご覧ください。