ぼくはイイヅカタカヒロさんの新しいシグネチャーヨーヨー メシア666の発売に頭を抱えた。最近、ヨーヨー関係の日記(駄文)をこれまで数本書いてみたのだけど、メシア666のリリースは完全予想外。若干ネタ切れであるが、せっかく新しいヨーヨーを衝動買いしたので何か文章を書いてみることにする。
イイヅカさんとメシア666のことを知らないひとは↑の動画を見てほしい。未だにメチャクチャかっこいい。
新潟にいた頃の話
2007年の春から2012年の春まで、ぼくは新潟県の長岡市にいた。当時のぼくは工学について学ぶ大学院生だった。なかなかのハードな環境だったけれど、ぼくは5年頑張ってなんとか博士号を取得した。
当時の新潟県にはヨーヨープレイヤーは多くなかった。ホンマくんとぼくは長岡市でヨーヨーの練習会を主宰していたのだけど、練習会を開いても、来てくれるのはせいぜい10人そこらだった。ただ、イイヅカタカヒロさんやマルヤマフトシくん(マルくん)というワールドレベルのレジェンドプレイヤーが参加してくれていた。イイヅカさんは帰省時のみのスポット参加だったけども、なかなか刺激的な環境であった。
マルくんのことはいずれどこかのタイミングで書くかもしれないけど、話が逸れそうなので、ここでは動画だけ貼っておく。マルくんは4Aヨーヨー(オフストリングヨーヨー)の歴史に大きな影響を与えた人でウンヌンカンヌン……などとウンチクを語るよりも見てもらったほうが早いタイプの人である。
なんで、こんな田舎からこんなとんでもないプレイヤー達が生まれたのかというと、きっと雪が深すぎるせいだ。これは半分冗談だけど、半分本気だ。彼らは関東で大学生活を過ごし、そこでヨーヨープレイヤーとして大きく成長したのだけど、雪国で育ったことによって培われた性格的な気質がヨーヨーの上達になにか好影響を及ぼしたのではないかと思っている。
新潟県はマジでとんでもないレベルの雪国である。県庁所在地の新潟市は海沿いだからまだマシらしいけど、ぼくがいた長岡市でも冬場、1日か2日で1mくらい雪が降るようなことはさほど珍しくなかったように思う。太平洋側に住んでる人たちが、あっという間に1mくらい積もっちゃう雪国のことを正確にイメージするのはきっと難しいと思うので、もう少し詳しく書いておく。
長岡市では交通インフラの大部分を自動車に依存しているため、道路が生命線である。そのため、道路の除雪は至上命題である。幸いなことに長岡市のほとんどの車道には消雪パイプが付いている。これは組み上げた地下水を放出して道路上の雪を溶かす装置だ。これはなかなかパワフルで雪をバンバン溶かしてくれる。その代わり、歩行者は気を抜くとたちまちずぶ濡れになる。当時のぼくは自動車なんていうブルジョワジーの贅沢品を持っていなかったので、ぼくは消雪パイプから放出される水を注意深く避けながら歩く必要があった。
消雪パイプで溶かしきれなかった雪は、除雪作業車で道路の脇に避けられる。その結果、歩道には背丈を超える高さの雪の壁がそこかしこで作られる。そのせいで、冬の間、歩行者が歩ける場所はめちゃくちゃ狭い。足元は滑るし、ぐちゃぐちゃだし、歩行者泣かせの土地だった。
あの街は片田舎なのに、雪が降りすぎて深夜でも妙に明るい。積もった雪がわずかな光を反射拡散するからである。どの道路も消雪パイプから出たサビで赤茶けていた、そんな記憶がある。
とは言えど、長岡市はまだマシで、マルヤマくんが育った十日町市なんかは長岡の2倍か3倍は雪が降るらしい。嘘かまことかは知らないけども、人間が作ったある規模以上の集落の中で、もっとも雪深いのが十日町市であるらしい。それ以上雪が降るところで、人間は集落を作れないとかなんとか。
こんなに雪が降る地域なので、当然、娯楽も少ない。ぼくの居た大学は山奥の修道院みたいな環境で、勉強をするか、アニメを見るか、ヨーヨーをするか、漫画や小説を読むかくらいしかやることがない。ドラゴンボールで言うところの「精神と時の部屋」……とまでは言わないが、なかなかの環境である。そんなところで、ぼくはヨーヨーとアニメ鑑賞と制御工学の研究に精を出していた。いま思えば、ヨーヨーがもっと上達してもおかしくない環境だったのに、なんでぼくはそれほど上手くなれなかったのか、不思議である。
昔、使っていたヨーヨーの話
大学院のころ、ぼくはもともとヨーヨーファクトリー社のグラインドマシーン2(GM2)を使っていた。2010年よりも前の話である。グラインドマシーン2はヨーヨーファクトリーがF.A.S.T. 401kのあとに出したメタルヨーヨーで、ハブスタック機構を搭載しているのが特徴である。同時期に販売していた同社のG5やG5プラスよりも幅広だった。G5とグラインドマシーン2の違いはトラピーズ有効幅で、「スピーダーが好きならG5、ナイトムーブスが好きならグラインドマシーン2」みたいなこともよく言われていた。
グラインドマシーン2からハブスタックを廃して、形状と重量を調整したのが「ジェネシス」である。ジェネシス発売後、ヨーヨーファクトリーのスポンサードメンバーはみんなジェネシスを使っていたらしいけど、ぼくはジェネシスがあまりピンと来なかった。理由はいまだによくわからない。
その後、ヨーヨーファクトリーのヨーヨーをいくつか買ったが、どれもピンとくるものを感じなかった。そうして、ぼくは徐々にヨーヨーファクトリーから離れていった。ターニングポイントや44 receation (後のyoyorecreation)の勢いがどんどん増していた時期というのも一つの理由としてあった。
さて、当時のぼくはフルサイズのヨーヨーを使うことが多かったけども、この頃の新潟のヨーヨー界隈ではアンダーサイズヨーヨーのシェアがとても高かった。ヨーヨーファクトリーで言えば888やスカイライン、ボス、ユークスタ、44とか。ターニングポイントで言えば、RTとかリヴァイアサン。そして、yoyorecreationで人気だったのが、イイヅカタカヒロさんのシグネチャーヨーヨー メシアだった。
ぼくはメシアはあまり使い込まなかったのだけど、周囲の仲間達の影響はばっちり受けた。ぼくが社会人になって新潟県から離れたころ、アンダーサイズのヨーヨーはすでに市場から消え去りつつあったけど、ぼくはできるだけ直径の小さいヨーヨーを使い続けることにしたのだった。新潟の彼らのようになりたかったのだと思う。
ターニングポイントのリヴァイアサンシリーズ(直径53mm)は長く使ったし、yoyorecreationのE=mc^2(直径52mm)なんかもかなり気に入っていた。E=mc^2はモノメタルだけど、インナーバイメタルのスプートニク(たぶん直径54mm)よりも使いやすいと思っていた。
これが流行に抗う動きだったことはいくつか前の記事で書いたと思う。昔のぼくは流行に抗うのが好きだったのだ。ただ、競技で結果を出したいならヨーヨーのサイズに変にこだわらず、流行してるモノを使うのが1番だ。「こだわり」は時に大きな力になるが、悲しいことに逆効果になることもあるのよね。
イイヅカさんごっこの話
「あのユウキ・スペンサーだって直径50mmの888を使うのをやめて、直径56mmのジェネシス使ってんねんぞ。なんでお前、そんな直径ちっさいヨーヨー使ってんねん。」
これはネギ沢なんとかさんという、ヨーヨーTwitter界の王(※誰のサブ垢かはここでは書かない)に昔、言われた言葉である。彼の言いたいことはよくわかる。うんうん、わかるよ。こだわるべきところはそこじゃないよね。
でもな、ネギ沢、お前な、言うとくぞ。お前が「なんでそんなちっさいヨーヨー使ってんねん」って言った約10年後、お前、メシア666を買ってめーちゃくちゃ楽しそうにキャッキャウフフするからな。俺、お前がイイヅカタカヒロごっこしてる動画、ちゃんとチェックしたからな。今度、お前に会ったら、「なんで直径50mmのヨーヨー使ってるんですか?」って言うたるからな。覚えとけよ。
ちなみに、いい機会なのでぼくもイイヅカさんの技をいくつか習得して、イイヅカタカヒロごっこをした。メシア666という新しいバイメタルヨーヨーで。楽しかった。これは人を笑顔にする、良いヨーヨーだと思った。ぼくみたいなオッサンが触って昔を懐かしむのに最高に適した、ナイスなヨーヨーだった(アンダーサイズのヨーヨーはぼくにとって、新潟に住んでいたころの思い出とワンセットである)。
とは言え、アンダーサイズのヨーヨーは人を選ぶ側面がどうしてもある。細かいところを通しやすくなる反面、技の成功率が落ちがちである。フルサイズのヨーヨーの感覚で動かすと、ふとした場面で糸が外れてしまったりことがあるからだ。また、直径が小さい分、回転力をつけようとするとリムを厚く盛らないといけなくなるので、「動かしにくさ」が出やすい。「塊感」なんていう言葉もよく言われるみたいだ。
でも、アンダーサイズは特有の面白さがあるので、触ってみたことがない人はぜひ一度触ってみると良いと思う。メシア666は塊感が小さいヨーヨーなので特におすすめだけど、別に、他のヨーヨーであっても良い(メシア666はちょっと高いからね)。最近のyoyorecreationにはチョビゴリラとか、メシア(モノメタル)とか、比較的、お求めやすい価格のアンダーサイズがいくつかある。ぼくは知らないけども、いまどきはほかのメーカーでも良いアンダーサイズヨーヨーがありそうである。
Mrmatioさんの話
なお、ぼくはイイヅカさんの技をmrmatioさんの動画で勉強した。mrmatioさんのトリック解説動画はわかりやすいものが多いのでおすすめである。
Niigata Yoyo Contestの話
話題は変わるけど、NIIGATA YOYO CONTESTというのを年末にやるらしい。ぼくは行ったことがないけども、噂ではなかなか評判の良い大会で、今年はたしか5周年とかじゃなかったかな。
今年(2024年)の大会は12月21日(土)と22日(日)の2日間。開催場所は長岡駅直結のアオーレ長岡というキレイな建物。上越新幹線から降りて徒歩数分なので、遠征勢にも優しい場所だ。長岡市は新潟空港からのアクセスが悪いので、飛行機で来られる方には微妙かもだけどね。自動車で行く人はスタッドレスタイヤで行ったほうがいいかも。地元の人がスタッドレスを履いてても、雪道でスピンしたりするような土地だからね。
競技ガチ勢の人は大会のついでに冬の新潟の雰囲気を味わってもらって、エンジョイ勢の人は旅行のついでにヨーヨーするといい。どちらも、なかなか素敵な体験になるんじゃないかな。
新潟県は田舎だけど、その代わりに美味しい食べ物が多い。魚介に日本酒、背脂ラーメン、へぎ蕎麦、油揚げ、イタリアン(B級グルメ)、なんでもござれである。値段も安いから、いろいろ食べて帰って欲しい。
駅前のホテルが取れなかったら、温泉に泊まるのもいいかもね。旅費はかさむけど、雪を見ながらお風呂に入るのは悪くない。
こんなこと書いてたら、ラーメン食べたくなってきたな〜。なつかしい。ぼくはまだ子どもが小さいから行けないけども、この大会が5年後も続いていたら参加したいな。