コラム PR

Yoyorecreation初の完全中空機種は買いか?CAP WAS INEXPLICABLE

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

前書き

先日、アトモスプロジェクトのNoma.を買い逃したことで、ぼくの中で何かが閾値を超えたような感覚があった。簡単にいうと、「キレちまった」ってこと。ぼくらは妖々邪夢(※知らない人は以下のコピペを参照のこと)の時代から、少数生産のヨーヨーが買えるか買えないかで一喜一憂してきた。

妖々邪夢は糞 

人様がまだ購入してないものを 

勝手に生産終了しやがって!生産終了とか発表 

すれば飛びつくとでも思ってんのか

俺は疑問に思う。 

本来、消費者が欲しがっているものを提供するのが 

生産者のあり方ではないのか 

ニーズに答えられない会社は 

この先,生き残れないのではないか 

そもそもそんな会社は会社と名乗ることも許されない俺は認めない,妖々邪夢を認めない

さて、ぼくらがオッサンになってもヨーヨーブランドに振り回されなければならないのはなぜか!?それはぼくらが「消費者」だからだ。振り回されることへの憤りから逃れるためには、どうすればいいか!わかるか!君たち!!

そうだ!自分でヨーヨーを作る、生産者になればいいのだ!……と言うわけで、昨年末から、3D CADの勉強をしたり、細々とした計算をしたり、調べ物をしている。インターネット上には先人たちの情報がいくつも転がっているので、それを参考に色々やりはじめたところだ。ということで、2025年の目標は「自分でヨーヨーを設計して発注してみる」と言うことですね。頑張りましょう。

適当に作った3D CADデータ。ひとまずShapr3dで作ってみたけど、サブスク料金が高いから別のCADで作りなおす予定。

キャップって必要なん?

さて、「ヨーヨーを設計してみる」と言うことを考えた時に、側面にキャップ(フタ、サイドプレート)をつけるかどうかは結構悩ましい問題と言える。「せっかくなので、つけられるようにしておくか?」、それとも「いや、そんなものは不要だ」……自分の中で葛藤があり、まだ答えが出ない。

別にあんなものなくても困りはしないし、むしろキャップをつけることで回転力は下がる方向に行く。実際問題、現代のヨーヨーのほとんどはキャップレスである。いまどき、キャップがついている1Aヨーヨーってダンカン フリーハンドとか、スピンギアのスピンガジェットくらいか? あとはよく知らない。メタルでもたまにキャップ付きの中空ヨーヨーがあるみたいだけど、ぼくは買ったことがない。

だけど、キャップがある方がデザインの幅が広がる。2000年代前半のプラスチックヨーヨーにはサイドキャップがあるのが当たり前だった。ヨーヨージャムやバズオンなど、めちゃくちゃアメリカを感じるデザインの、日本人からしたら共感し難い、あのセンスのキャップの魅力を文章で説明するのは困難だと思う(ぼくは結構、ヨーヨージャムのキャップのセンスが好きだ)。

フリーハンドなんかはキャップの交換が楽しい。ぼくは手持ちのフリーハンドをほとんど処分してしまったのだけど、昔はよく交換して遊んだものだ。

ヒグビーペイントフリーハンド

これは倉庫に1個だけ残っていたヒグビーペイントフリーハンドゼロ。同じものは二つとない、希少価値の高いヨーヨーだが、友人にレセス加工してもらってガンガン使っていた。

ヨーヨーを「愛すべきオモチャ」と考えた時、キャップはあったほうがいい。でも、回転性能の面ではキャップはいらない。現代の多数派はキャップレスなのかなと思う。ただ、一部に、キャップ付きのヨーヨー(中空構造のヨーヨー)の熱烈な愛好家がいるのも事実である。キャップがあるほうがフィーリングがいいという人もいる。

キャップってなんなんだろう?不可解だ。ぼくはその疑問の答えを知りたいと思った。

CAP WAS INEXPLICABLE

……とまぁ色々書いたのだけど、yoyorecreationからCAP WAS INEXPLICABLE(以下、INEXPLICABLEと略す場合がある)が出なければ、こんなこと考えもしなかった。CAP WAS INEXPLICABLEはキドケンゴオーナーが中空ヨーヨーの謎を解き明かすために設計したヨーヨー作品群のことである。

このヨーヨー作品群は実験的な意味合いが強い。どうも、INEXPLICABLEというのは日本語に翻訳すると「不可解」という意味らしい。CAP WAS INEXPLICABLEで「キャップは不可解だった」という意味になるわけだけど、この実験を通じてケンゴオーナーはキャップのことを理解しつくしたということなのだろうか。

INEXPLICABLEには3つのヨーヨーがある。いわゆる普通のヨーヨー(キャップレス)のUNIFY、側面の半分をキャップで覆ったHATCH、側面を完全にキャップで覆った完全中空ヨーヨーのSEALEDである。UNIFY、HATCH、SEALEDは直径、横幅、重量が全く同じで、リムの内側の形状と側面のキャップの有無のみが異なる。

SEALEDはyoyorecreation初の完全中空ヨーヨーということで、注目している人も多いのではないかと思う。ただ、問題は価格だ。INEXPLICABLEは3個セット販売のみで価格は25000円、まさかの単品販売なしである。そりゃないぜって感じ。価格がネックで二の足を踏んでいる人も多そうだ。

ただ、これは人によっては価格以上の価値があるヨーヨーかもしれない。ぼくは実際に買ってみて、そう思った。でも逆に、人によっては、全く価値を感じられないヨーヨーかもしれない。難しい。やっぱりキャップって不可解だ。

https://twitter.com/kendi44yoyo/status/1878232301899063587

以下、この3つのヨーヨーを個別にレポートをしてみたいと思う。

UNIFY

この3つのヨーヨーを理解するには、まずUNIFYがどんなヨーヨーかを理解する必要がある。比較のために、スレイプニルとUNIFYの比較画像を示す。

UNIFYとスレイプニルの比較1
UNIFYとスレイプニルの比較2

UNIFYのサイズ感や形状はスレイプニルに近い部分が多い。ただ、感触は全く違っていて、回転力はかなりマイルドになっている。その代わり、操作感はとても柔らかく、優しい感じがする。ぼくは持っていないけども、石原弘康選手のシグネチャーモデル「ミスターブッチャー」やリベリオンの「ブッチャー」に近そうな気がする。スレイプニルのソリッドな、硬い感触が好きな人には合わないヨーヨーだと思う。

スレイプニルとUNIFYを並べて見ると、リムの内側の形状が全く違うのが面白い。手書きで申し訳ないのだけど、以下にヨーヨーの断面形状のイメージを示す。

各ヨーヨーの断面のイメージ

スレイプニルはボディの内周部が薄く、外周部が肉厚になっている。しかし、UNIFYは内周部と外周部でボディの薄さがほぼ同じである。スレイプニルの材質はA7075、 UNIFYはおそらくA6061。A6061のほうが比重が軽いから、普通はその分、外周部を肉厚にしないといけないはずだが、UNIFYは実験機。後述のSEALEDと比較するために、あえて外周に重量を乗せていないのだと思われる。

結構、金属音が気持ちいいのもUNIFYの特徴の一つ。リムの厚さが一定だからかな。アルミ系でここまで綺麗に音が鳴るヨーヨーも珍しい気がするね。

なんとなくだけど、「ヨーヨーが上手い人」はUNIFYのことを好きそう。UNIFYは少ない力で狙ったところにヨーヨーが動く感じがある。ミスしにくいヨーヨーという気がする。ただ、その分、慣性モーメントが小さい(外周部に重量を寄せられていない)から、回転力が低く、ミスした時にヨーヨーが大きく傾いたり、ヨーヨーが止まりやすい。そういう繊細さがある。ただ、慣性モーメントが小さいことは悪いことだけじゃない。スロー時の回転速度の初速を上げやすいから、しっかり投げれば結構コンボできる。

UNIFYがブッチャーと似ていることを考えると、1Aよりも5Aに適正が高そうな感じがする。ヨーヨーとウェイトを両方操作しないといけない5Aでは、外に引っ張られる感じが弱い、こういうヨーヨーの方がいいかもしれない。そういえば、ターニングポイントのアカンサスも意外と回らない印象なので、なんか似ている気もする。個人個人の好みによるんだろうけども、こういう重量バランスが分散したタイプのヨーヨーが好きなのは5Aの人が多いと思う。もちろん、競技志向というよりはカジュアル志向のヨーヨーが好きな1Aプレイヤーにも合うとは思う。

でも、悩ましいのは、「単純にヨーヨーの性能向上を考えると、内周・外周にもう少し重量差をつけたほうがいいのではないか?」ということ。これって競技志向寄りの考え方かも知んないけどさ。例えば、yoyorecreationの1A向けモノメタルの現行ラインナップではモノトーンあたりがライバルになりそう。それと、初中級者向のこれから技をたくさん覚えたいという人に対しては、トリックラボスタンダードの方がいいと思う。

yoyorecreationっていろんな機種を取り扱っているので、自社内にたくさん競合となるヨーヨーがあるのが魅力でもあり、悩ましいところでもあるね。ただ、「現行ラインナップでブッチャーに似たヨーヨーって何なのよ?」と聞かれると、多分、UNIFYなのかなって感じ。他にない魅力があるヨーヨーかな。

SEALED

次に説明するのはSEALED。SEALEDはリクリ初の完全中空ヨーヨーなわけだけど、実はUNIFYとの差は意外と小さい。「なんで!?どうして!?」となりそうだけど、回転軸周りの慣性モーメントがおそらく一緒なんじゃないかな。内部の構造が見えないから、正確なことはわからないんだけどさ。

実は、個人的には3つの中で1番扱いにくかったヨーヨーがSEALED。UNIFYと似てはいるものの、ここまでくると重量バランスがいつも使っているヨーヨーとかなり違うので、力の入れ方がよくわかんなかった。まだ慣れてないからなのかもしれないけども、現時点では扱いが難しいヨーヨーだなと思っている。

少し残念ではあるのだけど、「うぉぉぉぉ!中空最強!!!!」っていう感じにはならなかったな。でも中空って元々そういうものなのかもしれない。これにカスタマイズ性があるとまた違うんだけど、SEALEDはキャップが取り外せないのが残念なところ。これに関しては次作に期待したい。

ケンヂ博士
ケンヂ博士
シモンさんのプレゼン、大人だな〜と思います。狙いも面白いですよね。

ただ、キャップの有無の違いがあるにも関わらず、SEALEDとUNIFYの操作感がかなり似ているというのは驚くべきこと。これはぼくみたいに「これからヨーヨーを設計したい人」は必ず触っておくべきじゃないかなと思う。もちろん、現役のヨーヨー設計者の方々も触っておくべき。リクリエーションが二束三文に近い金額で実験結果を公開してくれているのは、ヨーヨー業界的にすごいことだ。後々に残すべき価値のある、資料的な意味合いのヨーヨーだと思うね。

HATCH

最後に説明するのがHATCH。中空が好きな人にはピンとこないかもしれないけど、ぼくはこれが3つの中で1番良いと思った。初見では、UNIFYが1番普通のヨーヨーかなと思っていたんだけど、実はHATCHが1番普通かもしれない。

これ、リムが大きくえぐれているんだよね。だから別に外周に重量が寄っているわけじゃない。回転軸周りの慣性モーメントの正確な数値はわからないんだけど、他の2つと大差ないはず。せいぜい、数%しか変わらないんじゃないかな。

リムの内側の溝はかなり深い。親指の爪が半分程度隠れる。

ただ、フィーリング的に普通のヨーヨーに1番近い気がしている。昔、ぼくは一時期、E=mc^2を使っていたんだけど、E=mc^2よりもシャキシャキ動くので、しばらくはHATCHを使ってみようかなと思っている。3個セットで25000円もしたからね。使わないと損々。

結論

「yoyorecreationのCAP WAS INEXPLICABLEは買いなのか?」という疑問に対する答えはケースバイケースだと思います。

INEXPLICABLEを買うべきなのは以下のような人たちだと思います。

  • リクリの熱烈なファン、コレクター
  • 中空ヨーヨーのファン、コレクター
  • ヨーヨーの設計者、または設計者になりたい人
  • ヨーヨーにおけるキャップの不可解さを解き明かしたい研究者の方

INEXPLICABLEは再生産されるか不透明なので、欲しい人は早めに買っておくべきだと思います。3個セットの箱はプレミア感があって素敵なので、開封時の満足感がかなりあります。

逆に以下のような人たちは、INEXPLICABLEを買うべきではないと思います。

  • 初中級者の方(※他のヨーヨーのほうがオススメ)
  • 中空ヨーヨーを触ったことがない方
  • カスタマイズ性の高い中空ヨーヨーが欲しい方

以上、CAP WAS INEXPLICABLEのレポートでした。

なお、CAP WAS INEXPLICABLEを買ってキャップの謎が解けるかどうかはその人次第です。悪しからず。

ちなみに、自作のヨーヨーに48mmキャップをつけられるようにすべきかどうかは未定です。

おまけ

新しい謎

CAP WAS INEXPLICABLEを昨日、一日触ってみて大体理解したつもりになっている。ただ、今、少し気になっているのは「これ、どうやって作ったの?」ってこと。旋盤加工する時にヨーヨーのどこを掴んだのか、それがわからない。わかる方、どなたか教えてください。

タカツさんの動画

なお、INEXPLICABLEとキドケンゴ氏についてもっと理解するには、以下の動画を見るといいと思います。

ABOUT ME
ケンヂ博士
高橋 健治。某工業高専出身のアラフォー工学博士。 東北生まれのエセ関西弁話者。研究者として日系メーカーに10年以上勤務。数学、制御工学、電気工学、パワエレ、プログラミング、ヨーヨー、将棋などがそこそこできるマルチプレイヤー。大阪府の端っこで、お嫁様+2人の娘たち+4匹の金魚.etcと暮らしている。

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です